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メキシコ自動車産業の今:ニアショアリングの追い風とUSMCA再協議・EVシフトの試練

メキシコは、北米における自動車製造の中核拠点としての地位をますます強めている。とりわけ近年、米中関係の悪化とサプライチェーンの見直しにより、**ニアショアリング(近接地への生産移転)**が加速。アメリカ市場をターゲットとする企業にとって、メキシコは地理的・コスト面での優位性を持つ生産基地として注目されている。


ニアショアリング:メキシコへの投資が急増


2022年以降、日系・欧州系・米国系の自動車メーカーやサプライヤーが相次いでメキシコに新工場やライン拡張を計画しており、これにより同国の自動車生産能力は大きく押し上げられている。特に北部州(ヌエボ・レオン州、コアウイラ州など)には、テスラを含むEV関連企業の大型投資も進行中だ。


この流れは雇用の創出、輸出拡大、地場産業の発展といったポジティブな波及効果をもたらしており、メキシコ経済にとっても追い風だ。


不安材料:USMCAの見直しと規制の不透明さ


しかしながら、2026年に予定されている**USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)**の見直しは、現在の安定した貿易環境に冷や水を浴びせる可能性がある。原産地規則や労働基準の厳格化が議題になると、自動車部品の調達構造や工場運営コストに直接的な影響を与えかねない。


さらに、メキシコ国内でもエネルギー政策や労働法の変動が企業の意思決定に不安を与えている。再生可能エネルギーへのアクセス制限など、サステナビリティ要件に敏感なグローバル企業にとってはリスク要因となっている。


EVシフト:機会と課題が交錯


EV(電気自動車)市場への移行は、自動車業界全体に大きな変革を迫っている。メキシコでもバッテリー生産やEV組立てラインの投資が進む一方で、充電インフラの遅れ専門人材の不足といった課題が依然として残る。


また、EV関連部品の多くはアジアに依存しており、地産地消型のサプライチェーン構築には時間とコストがかかる。これに対応するためには、政府と民間の連携による技術投資とインフラ整備が不可欠だ。


メキシコの自動車産業は、地政学的な追い風を活かしながら新たな成長局面を迎えている。しかし、USMCA再協議やEV転換の重圧という現実も直視しなければならない。この複雑な局面を乗り越える鍵は、「柔軟な対応力」と「先手を打つ戦略性」にある。

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