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霧の中を進む:メキシコの消費財業界における不確実性と主要トレンド(2025年版)

消費を覆うマクロ経済の不確実性


低成長と消費の弱さ


2025年のメキシコ経済成長率は控えめに見られています。OECDは約0.4%の成長を予測しており、2026年には若干の回復を見込んでいます。一方、BBVAは投資減退と外部要因により、2025年のGDPは–0.4%のマイナス成長になる可能性があると指摘しています。


フィッチ・ソリューションズも、インフレと世界的な不安定性を背景に、個人消費は引き続き軟調になると分析しています。BBVAのデータでは、特に食品分野での支出が前月比で–1.2%となるなど、消費の減速が既に表れています。


このような状況では、企業はとくに非必需品において、価格弾力性の高い需要に直面することとなります。


インフレ、金利、為替のプレッシャー


表面的にはインフレ率は下がっているように見えても、基礎的なインフレ圧力は依然として高止まりしています。メキシコ中央銀行の副総裁も、賃金上昇と国際的な食品価格の変動を理由に、利下げには慎重な姿勢を取っています。


また、メキシコペソは、貿易政策の不透明さや世界的なリスク回避の流れにより、下落圧力にさらされています。多くの消費財企業が輸入原材料やパッケージ資材に依存しているため、為替変動は利益率に直接影響を及ぼします。


貿易と政策の不確実性


メキシコは製造・輸出拠点としての地位が高く、外的な政策変化の影響を受けやすい国です。特に米国からの関税政策の変更は、消費財にも波及する可能性があります。


国内でも、輸入税や環境・表示規制の変更により、製造コストや商品の再設計が必要となる場合があります。企業は継続的な政策モニタリングと柔軟な対応が求められます。


消費者行動と構造的なトレンド


逆風の中でも、消費者の行動は進化しています。新たな購買スタイルとブランド戦略が、業界に変化をもたらしています。


ソーシャル&デジタルコマースの急成長


ソーシャルコマース市場は年率約20.8%で成長し、2025年には約50億ドルに達する見込みです。Eコマース市場全体では、2025年までに1091億ドル規模に達すると予測されています。


「Hot Sale(ホットセール)」のようなネットイベントに対して、90%のメキシコ消費者が参加予定であり、支出は前年比で20%増加する見込みです。

これにより、オムニチャネル戦略やソーシャルコマース対応は、もはや選択肢ではなく必須事項です。


リコマースと循環型消費の拡大


中古品、下取り、再販売といった「リコマース」市場は成長中で、2025年には約18.7億ドルに達すると見込まれています。


企業にとっては、リユース製品の販売、認証済みリファービッシュ品の提供、長期保証やメンテナンスサービスといった新たな事業モデルへの移行がチャンスとなります。


節約志向と健康志向の二極化


インフレ環境下では、節約志向が強まる一方で、ミドル~ハイエンド層はプレミアム商品に対して支出意欲を維持しています。特に健康・ウェルネス志向やクリーンラベル志向が強まり、消費者は原材料の透明性やサステナブルな調達を重視しています。


耐久財・白物家電の堅調な需要

白物家電市場は今後10年で年率4.1%の成長が見込まれており、節電やスマートホーム対応製品を中心に需要が底堅く推移しています。


戦略的示唆と企業への提言


メキシコ市場で成功するには、以下の戦略的対応が重要です:

  1. ポートフォリオの再構築需要シナリオごとに収益性を精査し、低収益なSKUを削減し、耐久財や健康・サステナブル商品にシフト。

  2. サプライチェーンの柔軟性強化為替・関税リスクに備え、調達の多様化と在庫の戦略的確保が求められます。

  3. D2C・オムニチャネル強化直接消費者とつながるD2C戦略や、SNS連動の購買体験が競争力の鍵。

  4. リコマース事業の立ち上げ下取り、リファービッシュ、延長保証といった循環型ビジネスへの投資を拡大。

  5. 価格+サステナビリティの透明性訴求第三者認証やトレーサビリティを活用し、価値の裏付けを明確に伝える。

  6. シナリオ別のリスク対策米国からの関税ショックなどに備えた複数の対応計画を策定。


結論

メキシコの消費財業界は、マクロの不確実性と需要の揺らぎに直面しています。しかし、デジタル拡大、リコマース成長、価値重視の消費スタイルなど、変化の中には新たな機会も潜んでいます。2025年の勝者となるのは、柔軟かつ俊敏に戦略を適応させられる企業です。

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