「Plan México」が拓く産業投資の新時代

Plan Méxicoの南部戦略：インフラ × 成長拠点 × 優遇策

計画の中心にあるのは、テワンテペク地峡地帯の大西洋―太平洋間物流回廊（CIIT） だ。以前の政権でも構想されていたが、「メキシコ計画」で本格始動。改修された鉄道と港湾（コアツァコアルコス港、サリナ・クルス港）を結び、南部ルートを競争力ある輸送手段へと進化させる。

この回廊には10カ所の産業拠点（Polos de Desarrollo）、ガスパイプライン、物流ハブが計画され、地元産業と外国企業の誘致が狙いだ。政府は全国15カ所の成長拠点を指定し、インフラ投資・税制優遇・サービス提供を集中させる。

2025年1月22日に施行された税制優遇措置法令により、新たな設備投資は即時償却可能となった。対象地域で事業を展開する企業には、法人税（ISR）、付加価値税（IVA）の減免もあり、今後さらに具体的な支援が発表される予定だ。

この計画は単なる地方振興ではない。明確に「アメリカ市場に近い製造拠点」としてメキシコ全体を再定義し、インフラ・規制・税制を再編。南部も今や「次の投資先」として位置づけられている

。

計画は壮大だが、安定した電力・水道・ガス・道路・港湾機能の実現には課題が残る。物流回廊（CIIT）は整備中だが、既存の輸送ルートと比べて流通量はまだ小さく、信頼性の確保が必要だ。

外国投資家にとって最も警戒すべきは法制度の変動リスク。近年の司法制度改革や規制当局の独立性への懸念が投資判断を左右する可能性がある。優遇措置が長期にわたって維持される保証はない。

麻薬カルテルの影響が残る南部では、治安の悪化が経済活動全体に影響する。最近の研究では、治安悪化が年間190億ドル以上の経済損失を招いていると指摘されており、投資判断に大きな影を落とす。

すでに発展している北部・中部の産業クラスターに比べ、南部はまだ「未開拓」。すぐに収益が出る投資先とは言い難く、整備進行と共に中長期視点でのアプローチが求められる。

逆風があるとはいえ、南部に投資機会は確実に存在する：

新たな製造拠点の確保：インセンティブを活用し、物流回廊沿いの産業団地に早期参入することで、競合に先駆けたポジションを築ける。
再生可能エネルギー・グリーン水素：地峡地域は風力・太陽光に恵まれ、グリーン水素の製造拠点として注目されている。すでにデンマーク資本が100億ドル規模のプロジェクトを始動。
産業クラスター型のサプライチェーン参入：電気自動車、医療機器、電子部品分野のサプライヤーにとって、新たなクラスター参入のチャンス。
物流・倉庫・貿易サービスの需要：CIITの成長に伴い、第三者物流、コールドチェーン、通関業務などの需要が急増する見込み。
官民連携によるインフラ投資：単独参入よりも、政府や地元開発会社との共同出資モデルの方がリスク分散には有利。